2024 年 67 巻 2 号 p. 62-67
加齢により,前庭機能,視機能,体性感覚機能のすべてが低下する.また,出力器官である運動器機能も低下するため,加齢による平衡障害は複合的な要素が関連して生じる.加齢性前庭障害は加齢による前庭機能低下であるが,浮動感,ふらつきなど慢性的なめまい症状を主訴とするため,他の慢性めまい疾患と鑑別し,診断基準に則って診断する必要がある.加齢性変化であること,両側末梢前庭機能低下と出力(運動機能)低下などから治療には難渋するが,前庭リハビリテーションや歩行訓練,サルコペニア・フレイル予防のため筋力を保つような訓練が行われる.近年,前庭機能低下は空間認知機能低下の他,注意機能など他の高次機能低下と関連するとの報告が増えており,加齢性前庭障害の診断・治療の必要性が高まると考えられる.