耳鼻咽喉科展望
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側方注視障害及び固視障害を呈した大脳挫傷例
横田 淳一吉本 裕今井 壽正
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1992 年 35 巻 1 号 p. 61-69

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抄録

右前頭部受傷後, 左方注視, 固視障害を呈した28歳男性例を報告した。MRIにて右前頭前野 (第10野) 脳挫傷と診断された。左方視にて左眼外転不可, 右眼内転は可能なるも保持は困難であった。しかし, 右眼遮眼で左眼外転は不完全ながら一瞬可能な一方, 左眼遮眼で左眼外転, 右眼内転位保持 (眼振を伴う) は可能であった。VOR, OKNは両側正常, ETTもpursuitは可能な事等から大脳障害による非共同注視, 固視障害と診断した。神経学的に他に所見は認められず, ただし, 神経心理学的に注意力低下, 思考緩慢など前頭前野障害症状が認められた。現在, 眼球運動の高次大脳中枢は明らかでないが, frontal eye field (FEF) は中枢の一つと考えられている。FEFは脳幹PPRFと密な線維連絡をし, FEF破壊例で固視障害も報告され, 更にFEF領域は8野のみならず前頭前野9野にも及んでいる事などから, 本例は前頭前野挫傷によるFEFへの線維連絡遮断による眼球運動障害と推察した。

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