耳鼻咽喉科展望
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延髄腫瘍摘出術後の重度嚥下障害に対する治療経験
八代 利伸伊藤 裕之金子 省三部坂 弘彦森山 寛
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1993 年 36 巻 2 号 p. 171-178

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抄録
今回我々は延髄Hemangioblastoma摘出術後に開口, 咀嚼, 嚥下, 発声構音障害を生じ, 全く経口摂取不能となった症例に対し, 耳鼻咽喉科, 形成外科, 歯科の各科協力による手術治療とリハビリテーションを行ったところ, 常食の経口摂取が可能となったのでこれを報告する。
症例は38歳女性, 平成元年11月に延髄のHemangioblastoma摘出手術を施行した。手術時の舌咽神経, 迷走神経の切断及び手術侵襲による二次的なWallenberg症候群により, 術後片側第5-第12脳神経の麻痺を生じ経口摂取は全く不可能となった。形成外科にて口角閉鎖不全に対する口角牽引術を, 歯科にて顎関節拘縮に対し癒着剥離術を, 嚥下障害に対しては耳鼻咽喉科にて輪状咽頭筋切断術等の手術治療及びリハビリテーションを行った結果, 常食の経口摂取が可能となった。
本症例のような脳外科手術後に生じた広汎な頭頸部領域の障害に対しては, 障害を総合的に捉え分析し, 治療の方法や順序の選択を行い, 障害発生後早期より各科が協力し, 集学的に治療していくことが重要と考えられた。
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