1993 年 36 巻 2 号 p. 166-170
舌根扁桃手術後に生じたと思われる稀な咽頭の瘢痕性狭窄症例を報告した。
症例は38歳男性で, 23歳で口蓋扁桃摘出術, 33歳で舌根扁桃切除術をうけ, 以後声の変化, 嚥下時のつかえ感を認めた。左右の口蓋弓が舌根部と広く瘢痕性に癒着し, 一部は咽頭後壁でも癒着しており, 咽頭が側方と後方からウェブを形成したように狭窄を生じていた。上気道狭窄症状はないが, 軽度の開鼻声があった。狭窄の範囲は広くないため, 接触型YAGレーザーで癩痕を除去しながら, できるだけ咽頭, 口蓋の粘膜を残しrawsurfaceを作らないようにして咽頭狭窄に対する手術治療を行った。術後, 開鼻声や嚥下時のつかえ感は消失し, 2カ月の経過観察で瘢痕化による再狭窄の兆候はみられていない。
咽頭の瘢痕性狭窄は, 口蓋扁桃, 舌根扁桃の手術の一つの合併症として留意する必要があると思われた。