抄録
リゾチーム (LZ) およびラクトフェリン (LF) のヒト上顎洞粘膜における局在を免疫組織学的に検討した。慢性副鼻腔炎症例から採取した49側の粘膜と, 正常対照群の13側の粘膜とを用いた。LZとLFは, 杯細胞と粘膜混合腺の漿液細胞とに観察された。慢性副鼻腔炎症例の粘膜では, LZが杯細胞において増加する傾向を示した。また, LZとLFは, 慢性副鼻腔炎症例の粘膜では, 上皮細胞の頂部や新生した非典型的な腺においても見られた。正常な粘膜混合腺では, ムチンを有する粘液細胞とLZおよびLFを有する漿液細胞とが明確に区別されたが, 杯細胞, 上皮細胞頂部, 非典型的腺では, LZ, LF, ムチンが同一の細胞に存在した。これらの結果から, 分泌細胞のLZ, LFおよびムチン分泌能は炎症の過程において種々異なっており, LZおよびLFが慢性副鼻腔炎の経過に何らかの役割を果している可能性が考えられた。