抄録
頭頸部扁平上皮癌培養細胞を用いて血管新生促進因子であるbasic fibroblast growth factor (bFGF) の産生能をみるとともに, 抗bFGF中和抗体の腫瘍細胞増殖抑制を検討した。またbFGF産生値と組織検体のF VIII RAG染色を用いた血管新生との相関性について検討した。
培養腫瘍細胞12株全ての培養上清中にbFGF産生が認められた。培養腫瘍細胞4種中2種で抗bFGF中和抗体による著明な増殖抑制を認めたが, recombinant human bFGFは腫瘍細胞の増殖には影響しなかった。培養腫瘍細胞のbFGF産生能と血管数とには相関性が認められ, bFGFは生体内の血管新生に関与する因子の一つであると考えられた。
以上のことからbFGFは血管新生因子の重要な一つであり, 腫瘍が産生するbFGFは, 腫瘍の増殖を増強する可能性があることが示唆された。