消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
Barrett食道に発生した早期食道腺癌の1例―Barrett上皮の発癌に関する考察―
中尾 一之井本 一郎石田 聡柴田 知行高司 智史梯 龍一嶋 照夫飯田 俊雄東口 高志野口 孝秋山 俊夫
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キーワード: Barrett食道, 早期食道腺癌
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1994 年 45 巻 p. 110-113

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抄録
 症例は48歳男性で,胸部不快感,嚥下困難にて来院した。食道内視鏡検査にて下部食道に発赤部位を認め,滑脱型ヘルニアも認めた。発赤部位の中に小陥凹域を認め,その部位よりの生検で高分化型管状腺癌の診断を得た。外科的切除標本では,腫瘍の大きさは5×18mmで,癌は粘膜内に留まっていた。癌は種々の程度の異型性を有する腸上皮化生により囲まれていた。以上の組織学的な検討から,最初胃粘膜に置き換えられた食道粘膜が次に腸上皮化生に置き換えられ,最後に腸上皮化生の中に腺癌が発生したと考えられた。本症例においては,胃粘膜組織は萎縮が高度で,腺窩上皮のみ存在し,腺管はほとんど消失していた。Barrett食道に発生する腺癌の発生率は0-47%と著者により様々である。高度異型上皮は癌への変換のハイリスク状態と考えられ,生検による厳重な経過観察が必要である。
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© 1994 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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