抄録
昭和60年より平成6年までの10年間に, 当科で再手術施行した耳硬化症症例10例10耳について検討した。最も多い再手術理由は, 初回手術後も聴力改善不良であった例で7耳あった。そのうち初回アブミ骨可動術施行した2耳の原因は, アブミ骨の再固着で再手術後聴力改善が得られた。また, 初回人工アブミ骨挿入した5耳の原因は, 人工アブミ骨の偏位(2耳), 開窓不十分(2耳), 卵円窓窩の粘膜肥厚(1耳)で, 再手術後3耳に聴力改善が得られた。次に, 初回手術後聴力改善が得られたのにもかかわらず, 経過中に急速に聴力悪化を自覚した症例が2耳ありいずれも人工アブミ骨の偏位が原因であった。そのうちの1耳は, 聴力改善を認めたが, 数年後に骨導聴力変動し, 再々手術にて原因を確認出来ず内リンパ水腫が疑われた。その他に, 初回手術後めまいが持続し外リンパ瘻を疑い, 再手術施行した症例が1耳あった。