1997 年 40 巻 4 号 p. 395-410
耳鼻咽喉科領域における術後感染症に対するempiric therapyをより有効なものとすることを目的として, 頭頸部悪性腫瘍患者手術後の白血球貧食機能を食菌プラーク法を用いて検討した。貧食の対象として用いた菌は術後感染を引き起こす主要な原因菌である黄色ブドウ球菌, 緑膿菌, 大腸菌の3菌である。その結果術後の白血球数が多いほど, また手術時間が長かった症例ほど術後の白血球貧食機能が上昇する傾向が認められた。ただしすべての菌に対して同じように貧食機能が上昇するわけではなく, 口腔癌症例のように腫瘍摘出後腹直筋 (または大胸筋) 皮弁による再建術を施行するため皮膚切開が広範囲にわたる場合には, 黄色ブドウ球菌に対する貧食機能が他の菌に対する貧食機能よりも上昇し, 中咽頭癌症例のように腫瘍摘出後の再建材料として遊離空腸を用いるような場合には, 大腸菌に対する貧食機能が他の菌に対する貧食機能よりも上昇する傾向が推察された。本研究には検討課題が残されているが, 食菌プラーク法を用いた手術後の白血球貧食機能検査がempiric therapyの一助となりうる可能性が示唆された。