耳鼻咽喉科展望
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鼻粘膜上皮細胞によるサイトカインの産生について
木村 貴昭山中 昇横山 道明九鬼 清典與田 順一國本 優保富 宗城
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1997 年 40 巻 Supplement2 号 p. 73-77

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抄録

鼻粘膜上皮細胞は吸入抗原が初めて出会う細胞のひとつである。われわれはIL-1α, IL-1β, IL-8などサイトカインの分泌を通して粘膜免疫における鼻粘膜上皮細胞の役割を検討した。IL-1はさまざまな細胞に働き, 他のサイトカインの分泌を促進させる。IL-8は好中球の走化・遊走に関与するもので, その炎症前期における効果は局所免疫に関与しているものと思われる。IL-1もIL-8も上皮細胞で産生され, その分泌はTNF, LPS, ある種のウィルスなどによって制御されているものと思われる。われわれは手術により得た15例の検体を使用した。検体は一晩プロテアーゼと反応させ, 小さな鋭匙で掻き単細胞の浮遊液を作製した。洗浄後細胞は培養液に浮遊させ, コンフルエントな状態になるまで培養した。培養液を入れ替えLPSやOK-432などを様々な濃度で添加し, そして24時間後に上清を分析した。その結果LPSによりIL-1α, IL-1β, IL-8の分泌が促進されることをELISA法にて確認した。しかし, OK-432によってIL-8の分泌は抑制された。鼻粘膜上皮細胞はIL-1, IL-8などさまざまなサイトカインを産生することにより局所免疫応答に能動的に関与しているものと思われる。

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