抄録
21歳の男性にみられた鼻口蓋嚢胞の症例を報告した。患者はこの1~2年の間に生じた両側性鼻閉の主訴で来院した。前鼻鏡所見は両側の鼻腔底より鼻中隔にかけて高度の腫脹があり, 鼻腔後方の後鼻孔は視診できなかった。単純X線ならびにCT Scan検査では上顎洞底部に嚢胞状陰影があり, 鼻腔底と鼻中隔の骨構造が変形していた。以上の所見からこの嚢胞はWHO分類の鼻口蓋嚢胞と診断した。
嚢胞は口腔前庭法でアプローチし, 嚢胞を開放したあと, 両側鼻腔底に嚢胞腔との問の交通路を作って手術を終わった。術後, 鼻腔ファイバースコープで観察すると嚢胞腔は肉芽組織が発生し, 腔に充満していた。
以上の所見から, 鼻口蓋嚢胞の病因, 臨床症状や治療法について文献を引用しながら若干の考察を加えて報告した。