耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
マウス嗅細胞のアポトーシスに関する研究
土宗 健夫
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 42 巻 3 号 p. 240-251

詳細
抄録
神経系細胞における細胞死には, 発生過程におけるシナプス形成期, 急性傷害, 神経変性疾患, 老化によるものがあり, アポトーシスであるといわれている。今回, 急性傷害におけるモデル実験として嗅球除去マウスを作製し, それによる嗅細胞死がアポトーシスである可能性についてTUNEL法, 走査電顕, 透過電顕を用いて検証した。嗅球除去翌日には, TUNEL陽性嗅細胞が多く観察され, 1週後には最低値をとり, 以後は正常嗅上皮よりも高い値を示した。走査電顕では, 嗅球除去翌日には, 嗅線毛マットは高度に消失し, 嗅上皮表層に球形で小型のアポトーシス細胞を認めた。透過電顕では, クロマチンの濃縮や核の断片化をおこした細胞すなわちアポトーシス細胞がみられ, さらにこのアポトーシス小体を貧食したマクロファージも認めた。またマクロファージに貧食されずに, 直接鼻腔に排出されるアポトーシス細胞も認めた。以上のことから嗅球除去翌日の嗅細胞死は, アポトーシスであることが判明した。さらに抗NGF抗体を嗅球に投与し, 嗅球のNGFを失活させたマウスを作製し, 投与後の変化をTUNEL法にて確認した。その結果は, 嗅球除去時と同様であり, NGF失活により, マウス嗅細胞は死を迎え, その死はアポトーシスであることが判明した。以上のことから嗅細胞のアポトーシスが, NGFによって回避可能であるならば, 嗅覚障害治療にあたり, NGFは重要な因子であることが示唆された.
著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top