1999 年 42 巻 3 号 p. 283-288
副鼻腔嚢胞に対する内視鏡下鼻内嚢胞開放術に磁気式ナビゲーションシステムInsta TrakTMを導入し, その有用性について検討した。対象は1998年9月より1999年2月までに当科で手術を施行した副鼻腔嚢胞12症例で, その内訳は前頭洞嚢胞2例, 上顎洞嚢胞8例, 節骨洞嚢胞1例および蝶形骨洞嚢胞1例であり, 蝶形骨洞嚢胞以外はすべて術後性の嚢胞であった。すべての症例においてInsta TrakTMは嚢胞壁の位置や開放可能な範囲のみならず, 眼窩内側壁や頭蓋内壁などの解剖学的危険部位を的確に表示した。したがって, Insta TrakTMを使用することで, 術者は解剖学的知識の裏付けができ, 安全に的確な嚢胞の開放が行えたと考えられた。しかし術中, ヘッドセットの変形や患者頭位との装着不備のためナビゲーションポイントに誤差が生じる可能性があり, 術者はこの誤差を常に念頭に入れて手術操作を行うことが肝要と考えられた。