昭和63年4月から平成10年3月までの10年間に, 当科において手術を施行した頭頸部良性腫瘍 (唾液腺疾患および先天性疾患を除く) 8例を検討した。内訳は脂肪腫2例, 神経鞘腫5例, 傍神経節腫1例であった。
頭頸部の脂肪腫は無痛性の腫脹で, 一般に臨床経過の長いことが多い。腫瘍自体が深刻な障害を引き起こすことは少なく, 外見上の問題および鑑別診断の問題となることが多い疾患である。今回その1例を症例報告した。
頭頸部の神経鞘腫は放置しておくと増大し必ず症状が出現するので, 原則的には摘出が望ましい。今回, 耳下腺内の顔面神経鞘腫1例, 舌下神経鞘腫1例, 舌神経鞘腫1例, 小後頭神経鞘腫1例, 迷走神経鞘腫1例の手術症例を経験し, 2例を症例報告した。頭頸部の傍神経節腫は, 約10%に悪性があり増殖は緩慢であるが副咽頭間隙への進展や頸動脈との癒着, 神経障害の可能性の点で早期の手術的治療が必要である。今回, 迷走神経傍神経節腫の1例を報告した。