耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
血清中特異IgE抗体検査法の比較検討
アラスタット法とキャップ法の乖離原因について
佐藤 春城荒木 進鈴木 伸弘山口 太郎鈴木 衞
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 43 巻 2 号 p. 111-118

詳細
抄録

アラスタット法およびキャップ法の測定結果を比較検討した。検討した6アレルゲンで, 測定値はアラスタット法がキャップ法よりも高値となる傾向が認められた。キャップ法のアラスタット法に対する陽性一致率は87.0%, 陰性一致率は91.7%であった。
アラスタット法標準品を検体としてキャップ法で測定した値は, 平均で表示値の0.57倍となり, 検体測定値が実際の濃度よりも高く算出される原因の一つと考えられた。
キャップ法陰性かつアラスタット法陽性 (C-/A+) となった18例中9例がネコで, すべてヤケヒョウヒダニがクラス4以上の強陽性だった。ネコのC-/A+例について、ネコおよびヤケヒョウヒダニアレルゲンを用いて, アラスタット法のネコ液相を用いたRAST抑制試験を実施した結果, ヤケヒョウヒダニアレルゲンによってのみ測定値の抑制が認められた。キャップ法およびアラスタット法がともに陽性の血清では, いずれの測定法によるRAST抑制試験によっても, ネコアレルゲンの添加によって測定値の抑制が認められた。これらの結果から, アラスタット法のネコアレルゲン中にダニアレルゲンが混入していると考えられた。
また, キャップ法陽性かつアラスタット法陰性 (C+/A-) の血清についてもキャップ法でRAST抑制試験を実施したところ, 添加したアレルゲンエキスの濃度依存的な抑制率の上昇が認められ, C+/A-中に特異IgE抗体の存在が確認された。
以上の結果より, 今回検討した2種の血清中特異IgE抗体測定キットの乖離原因には標準品の検定、使用アレルゲンエキスおよびアレルゲン原料の品質の違いが考えられ, 今後, 各社による標準品や使用するアレルゲンの標準化および厳格な品質管理の実施が望まれる。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top