抄録
過去5年間の鼻アレルギー患者277名に対して, 初診時の顔面単純X線像を用いて, 副鼻腔異常陰影の出現率 (副鼻腔陰影率) 及び陰影のタイプ (部位型分類とパターン型分類) と, 年齢・抗原感作・臨床背景・アレルゲン検査結果などの因子との関連性について検討した。対象全体の副鼻腔陰影率は35.7%で, 10歳未満の陰影率が50%と最も高かった。陰影率は, 感作抗原の種類によって影響をうけなかった。上顎洞陰影を部位型分類した各群と各因子の間には有意差は認めなかった。パターン型分類では, ポリープ型でのくしゃみ (発作回数) ・鼻汁 (鼻をかんだ回数) ・水性分泌量・鼻汁好酸球数のスコア値が他群より有意に高かった。以上の結果より, 各個人のアレルギー症状の臨床スコアのみでは, 副鼻腔の状態を直接には推察できないが, くしゃみ, 鼻汁, 水性分泌量, 鼻汁好酸球数が副鼻腔粘膜のポリープ形成の重要な因子になっている可能性が考えられた。