耳鼻咽喉科展望
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非球状ドライパウダー吸入剤の気道内沈着における空気力学径の検討
高野 頌小島 沙耶香伊藤 正行兵 昇間島 雄一
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2004 年 47 巻 Supplement1 号 p. 14-19

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抄録

薬剤吸入療法においてドライパウダー吸入剤の使用頻度が増加しているが, 一般にドライパウダー吸入剤は非球形でかつ製剤ごとに異なった粒子密度を持つことから, 同じ幾何学的形状をしていても空気力学径は異なることが知られている。したがって, 気道内での薬剤局所沈着量は空気力学径により求められる慣性力や拡散力を因子として推測されることから, 非球状ドライパウダー吸入剤の薬剤局所沈着量を正確に予測できないという問題点がある。本研究では, 吸入剤の空気力学径が, 製剤の粒子径, 粒子密度, 粒子形状, 気流との配向角に影響を受けることを明らかにした。ここで, 非球状薬剤粒子の気流との配向角は流体力学的モデルの数値解析により評価できた。また実験により, 飛行時間法により空気力学径を直接に測定した結果はこれらの数値解析結果を支持するものであった。ドライパウダー吸入剤の気道内での薬剤局所沈着率は空気力学径と吸入条件により求められるが, ヒト気道をモデル化したアンダーセン法を用いて局所沈着率を実験的に確認した結果, 実験結果は数値解析結果と極めてよく一致することがわかった。
以上の知見より, 非球状ドライパウダー吸入剤の使用の際には, 製剤の物理化学的性状を十分に把握して, 吸入剤の局所沈着率を予測することが必要である。

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