抄録
下歯肉癌進行症例の根治的治療では下顎区域切除と同時に広範囲軟部組織切除をともなうことから, 切除後の硬性再建は頭頸部再建手術の中でも比較的難度の高い手術である。局所手術合併症の一つである痩孔が生じると移植骨・プレートが唾液に汚染されることになり, 炎症による周囲組織の血行不良など複合的要因により創傷治癒機転が阻害され, 結果として感染が遷延しやすい。本稿では過去19年間に施行した下顎硬性再建例の再建材料別, 術前照射量別の合併症発生頻度ならびに手術手技を提示し, 下歯肉癌切除後の硬性再建に必要と思われる手技・注意点および合併症発生時の処置法について考察した。