Otology Japan
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原著論文
再手術を施行した乳突腔充填術予後不良例の手術所見
中江 進松井 雅裕神谷 透
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2010 年 20 巻 5 号 p. 697-703

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抄録

1996年から2008年まで乳突腔充填術を併用して鼓室形成術を行ったのは207耳(充填材に骨パテを用いたものは97耳、耳介軟骨片を用いたものは110耳)であった。予後不良にて再手術を行ったのは12耳で、頭蓋内合併症例が2耳、炎症再燃例が4耳、真珠腫再発が6耳であった。頭蓋内合併症例は骨パテ充填と軟骨片充填が各1耳、炎症再燃例は骨パテ充填が1耳で軟骨片充填が3耳、真珠腫再発例は骨パテ充填と軟骨片充填が各3耳であった。再手術までの期間は炎症再燃例は短く数日~数か月程度であり、真珠腫再発例は長く、1年~10年であった。頭蓋内合併症例2耳はいずれも初回手術時に中頭蓋窩硬膜の露出があり、制御されていない感染が充填材を通じて硬膜露出部へ波及したものと思われた。炎症再燃例では充填材の流出や、病的肉芽との混在が見られた。真珠腫再発をきたした骨パテ充填例では骨パテは皮質骨様に骨化し、顔面神経、半規管が同定できないので完全摘出は困難だった。一方軟骨片は摘出が容易だが、遺残蜂巣削開が不可欠であった。以上の所見から感染の制御されてない耳には乳突腔充填術を行うべきでなく、感染と硬膜露出が併存した場合は禁忌であること、骨パテ充填耳は再手術しにくいこと、重症症例には乳突腔充填術を併用しない外耳道削除型鼓室形成術が望ましいこと、を述べた。

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© 2010 日本耳科学会
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