2010 年 20 巻 5 号 p. 717-720
突発性難聴は未だ原因不明の疾患であるが、推測される病因の一つにヘルペスウィルスの再活性化が挙げられている。そのため治療に抗ウィルス薬を用いる試みがなされてきたが、これまでその効果を検討した報告の多くは聴力の改善において有意差を認めていない。今回我々はヘルペスウィルスの抗体価が高いものは再活性化と関連している可能性が高いと考え、2007年以降当院を初診した突発性難聴患者に血液検査を施行した。そして単純ヘルペスウィルスIgGの分布を検討し、抗体価が100EIA価以上の症例の一部に抗ウィルス薬を追加投与した。それ以外の治療は全て同じ条件で、聴力改善率を比較検討した。その結果投与群と非投与群の間で発症からの病日、初診時の聴力、めまいの有無、年齢について有意差を認めなかった。そして聴力改善率についても、有意差を認めなかった。