Otology Japan
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耳科学会教育コース3
経外耳道的内視鏡による中耳解剖
伊藤 吏渡辺 知緒欠畑 誠治
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2014 年 24 巻 2 号 p. 137-143

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抄録

手術用顕微鏡は、複雑な構造を呈する中耳腔を立体的に捉えられることから、耳科手術に必要不可欠な機器として定着している。一方、広角な視野を持つ内視鏡は顕微鏡の死角を確認するための補助的な役割として用いられてきた。しかしながら近年では高精細度 (high definition: HD) の3CCDカメラが開発され、繊細でコントラストの高い画像が得られるようになり、ほとんど全ての行程を内視鏡で行う経外耳道的内視鏡下耳科手術 (Transcanal Endoscopic Ear Surgery: TEES) が開発され、真珠腫の手術に応用されている。TEESでは広角な視野により鼓室全体を一視野で観察することができる。さらには内視鏡を接近することで、顕微鏡では死角となりやすい鼓室洞に代表される後鼓室や、鼓室峡部も直視下に拡大して観察することができる。内視鏡を用いて様々な角度から鼓室を観察することで、顕微鏡では確認できなかった構造を拡大して観察できるようになったため、顕微鏡による手術解剖とは異なる、内視鏡下中耳解剖 (Endoscopic Middle Anatomy) を十分に理解し、その上でTEESを行うことで、死角の少ない、安全・確実な手術治療が可能になる。

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© 2014 日本耳科学会
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