顔面神経膝神経節に発生した海綿状血管腫の一症例を経験した。症例は36歳女性で、徐々に進行する左顔面麻痺を主訴として受診し、CT・MRI検査で顔面神経膝部に腫瘍が確認された。定期的に画像検査をしながら経過観察を行なったが麻痺が進行したため、摘出術を行なった。手術は経乳突法と中頭蓋窩法の併用で行ない、神経再建も一期的に行なった。摘出標本での病理診断は海綿状血管腫であった。麻痺スコアは腫瘍摘出後に悪化は認めず、術後1年半経過した現在、わずかに改善傾向である。海綿状血管腫が側頭骨内に発生することは稀で、画像所見が類似する神経鞘腫との鑑別が困難である。腫瘍が小さいにもかかわらず感音難聴や顔面神経麻痺の程度が強い症例では、海綿状血管腫も鑑別診断に挙げる必要がある。