抄録
大阪赤十字病院で2008年1月から2012年12月までの5年間に、処置で耳漏が改善せず手術を必要としたMRSA中耳炎について検討した。MRSA中耳炎の診断は耳漏のグラム染色と培養所見から判断した。症例は78例88耳、疾患の内訳は慢性中耳炎初回手術例が47耳、真珠腫性中耳炎が25耳、過去に鼓室形成術を行いMRSA感染をおこした再手術症例が16耳であった。
手術のみで乾燥耳となったのは55耳、術後に浸出液が継続し処置を要したものの乾燥した例は27耳、処置でも改善せず再手術の上で乾燥耳となったのは2耳で、最終的に84耳 (95.5%) が乾燥耳となった。術後聴力改善例は、真珠腫段階手術後などの例を除くと85耳中50耳 (58.8%) であった。術前の乾燥状態や人工物の使用は術後乾燥に影響しなかったが、術前に乾燥している方が術後聴力は改善する傾向にあった。
MRSA中耳炎に対しては、術前後の洗浄や耳浴などの適切な処置、手術の際の清掃と感受性のある抗菌薬の投与が重要であると考えられた。