小児人工内耳適応基準 (2014) により適応年齢の下限が1歳に下げられ、体重の下限が8kgと設定された。また、両側人工内耳手術も有用と判断された場合は否定しないとされた。これらの変更に伴い、いくつかの手術手技上留意すべき点が生じている。乳児は低体重で循環血液量が少ないため、少量の出血でも問題となることがある。乳突蜂巣の発育が未熟な症例では、骨髄からの出血をこまめに止血しながら手術を進めることが肝要である。また、茎乳突孔が外側にあるため、皮膚切開を乳様突起先端にまで及ばないようにしなければならない。人工内耳本体の設置の際は糸による固定が必要だが、乳児の頭蓋骨が薄いため硬膜露出の可能性もあり、セルフドリリングスクリューの使用など工夫が必要である。また、両側人工内耳手術を異時性に行う場合は加熱メスの使用が有用である。さらに両側手術による前庭機能障害を避けるため、低侵襲手術を考慮する必要がある。