Otology Japan
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ミニシンポジウム
疫学的視点─近年の高齢者の難聴・認知機能・社会的孤立などの現況
内田 育恵杉浦 彩子中島 務植田 広海
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2016 年 26 巻 3 号 p. 155-160

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抄録

難聴は高齢者にとって最も一般的な感覚障害で、中高年地域住民を対象としたわれわれの調査によると、日常生活に支障をきたす程度の40dBHLを超える難聴者は、70歳代男性で5-6人に1人、女性で10人に1人程度である。難聴の存在は、個人や社会にさまざまな負の影響をもたらすことが、国内外の疫学研究から数多く報じられている。高齢期の難聴は、コミュニケーション障害、社会活動の減少から、抑うつ、意欲低下(アパシー)、認知機能低下、脳萎縮、フレイルや転倒、日常生活動作低下に関与する。ヘルスリテラシー低下や医療介入へのアドヒアランス不良、要介護リスクや死亡率の増加にまで関連することや、自動車運転、雇用、収入についても不利であることが指摘されている。難聴への介入としての補聴器活用が、これらの不利益を抑える効果に期待したい。

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© 2016 日本耳科学会
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