Otology Japan
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特別講演
中耳針状鏡管見
野村 恭也
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2020 年 30 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

1968年に我が国で開発されたセルフォックレンズは通常のレンズと異なりガラス内部のリチウムイオン濃度差で光はガラス内で屈折して焦点を結ぶ性質を有している.これにより径2 mm以下の内視鏡の製作が容易となった.関節鏡を長年にわたり製作してきた整形外科医の渡辺正毅はセルフォックガラスを使用して径1.7 mmのセルフォック関節鏡を製作した.

1979年に筆者らは鼓膜に穿孔のある患者の中耳腔をセルフォック内視鏡である中耳針状鏡needle otoscopeで観察した.患者は診察台に座ったままで麻酔は不要であった.電池内蔵の耳鏡で穿孔部を観察しつつ針状鏡を鼓室内に誘導し観察を行った.また接眼部に接続したティーチングスコープを高感度テレビカメラ(サチコン)に接続して画像をモニターに映した.上鼓室の後方が観察しやすくキヌタ骨短突起がIncus Buttressの上に載っている様子が観察された.後鼓室,下鼓室,前鼓室も観察可能であった.病的所見としては耳小骨連鎖離断,キヌタ骨長脚の欠損,アブミ骨の前庭陥没等が観察された.

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