Otology Japan
Online ISSN : 1884-1457
Print ISSN : 0917-2025
ISSN-L : 0917-2025
原著論文
ムコーズス中耳炎により細菌性髄膜炎を発症した妊婦の1例
滝瀬 由吏江深美 悟栃木 康佑永島 祐美阿久津 誠穐吉 亮平金谷 洋明平林 秀樹田中 康広春名 眞一
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 30 巻 4 号 p. 281-287

詳細
抄録

ムコーズス中耳炎に細菌性髄膜炎を合併した妊婦の1例を経験した.

既往歴のない30歳の女性で,妊娠経過は概ね良好であったが,左耳痛,耳漏があり,約1か月前より急性中耳炎として近医耳鼻科でセフェム系抗菌薬の継続投与を受けていた.一時改善するも,左耳漏の再燃を認め,妊娠36週4日時点で頭痛,嘔吐,意識障害を来たしたため,当院へ救急搬送された.左急性中耳炎から波及した細菌性髄膜炎と診断し,入院同日に緊急帝王切開術ならびに左乳様突起削開術を施行した.術後は細菌性髄膜炎に準じて抗菌薬静注加療を施行し,耳漏,髄液よりムコイド型肺炎球菌が検出された後は,ペニシリン系抗菌薬に薬剤変更した.母児ともに後遺症を残すことなく治癒し,第17病日に退院に至った.

成人の遷延性中耳炎においては,ムコーズス中耳炎を鑑別に挙げることが非常に重要であり,ムコーズス中耳炎の周知徹底が望まれる.

著者関連情報
© 2020 日本耳科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top