2021 年 31 巻 1 号 p. 39-44
急速な内耳障害をきたした真珠腫迷路瘻孔症例の原因と治療法を,自験例とともに検討した.症例は26歳男性.当院初診の16日前に右顔面神経不全麻痺を発症したが,近医での副腎皮質ステロイドの内服投与後10日で治癒した.当院初診の6日前に右耳漏と難聴を認め,真珠腫性中耳炎が疑われ紹介となった.初診時は伝音難聴であったが,5日後にめまいを発症し骨導閾値上昇を認めた.真珠腫性中耳炎迷路瘻孔と診断し,早急な感染制御を目的に真珠腫及び感染組織の除去と瘻孔閉鎖を行い,検出菌である緑膿菌の感受性抗菌薬を開始した.治療後の骨導聴力は,高音域を除き回復した.
当院の迷路瘻孔7例を検討した結果,感染耳5例中2例はスケールアウトで,術前骨導聴力悪化耳3例中2例で緑膿菌が検出された.急速な内耳障害は感染が関与するため,感受性抗菌薬治療と手術時期を逸しないことが重要であると考えられた.