分子シミュレーションは,統計力学の数値計算法である.対象とする物質系の相互作用エネルギーと物理的条件(統計母集団の種類とその状態変数の値)が与えられると,分子シミュレーションからその構造と物性値を予測することができる.分子シミュレーションには,モンテカルロ法と分子動力学法という二つの方法があり,また物質系の相互作用エネルギーを計算する方法として,電子レベル(分子軌道法・密度汎関数法),原子レベル(原子間ポテンシャルエネルギー関数),分子レベル(分子間ポテンシャルエネルギー関数)の計算法がある.ここでは,分子シミュレーションの基礎から最近の発展までを解説する.