応用物理
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Beyond CMOS に向けて
『応用物理』編集委員会
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2008 年 77 巻 3 号 p. 254

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抄録

電子産業の発展を担ってきたシリコンCMOS 半導体集積回路(LSI)の微細化は日進月歩で,45nm プロセスにより製作された20GHz プロセッサーが市場に投入されるまでに至りました.しかし,これからのCMOS 開発では,微細化(スケーリング)に頼るのみでは性能の向上が飽和することが予想されるため,電子産業のさらなる発展に必要な新しい技術開発が嘱望されています.その一つが,昨年の本誌9月号でも特集された,シリコンCMOS の継続的性能向上を維持するためのポストスケーリング技術です.ポストスケーリング技術はシリコンを中心に据えるという点で最も有望な路線ですが,その一方で,シリコンCMOS とは異なる概念を有する電子素子の出現にも大きな期待が寄せられています.本小特集では後者のアプローチに着目し,新原理・新機能・新構造に基づく機能性電子素子開発の可能性を論じます.

では,2進数論理演算を見事に実行するシリコンCMOS スイッチのさまざまな長所(微細加工限界,動作速度,動作信頼性など)を凌駕する新しい2進数スイッチング素子,または2進数という概念さえも打ち破り,シリコンの性能を上回る新パラダイム電子素子ができるのでしょうか? この問いに明確に「Yes」と答えられる研究・技術者は,世界的にも皆無でしょう.しかし,この暗中模索状態において,文部科学省はあえて2007年度科学技術振興機構(JST)-CREST のための戦略目標に「新原理・新機能・新構造デバイス実現のための材料開拓とナノプロセス開発」を掲げました.そこには“シリコンCMOS の延長では対応できない「次世代エレクトロニクス(Beyond CMOS)への壁」を突破できた国こそが,10〜15年後のエレクトロニクスの覇権を握る”と明言されています.きわめて高い目標ですが,とっかかりとしてはCMOS が苦手とする計算を補完するCMOS Supplement 技術を開発するだけでも大きなインパクトが得られると思います.本小特集ではBeyond CMOS やCMOS Supplement の種になりうる物性研究・材料研究の一部を紹介し,読者の皆様と一緒に電子素子の将来像を考えていきたいと思います.

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© 2008 公益社団法人応用物理学会
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