2009 年 78 巻 5 号 p. 459-464
放射光を利用することでさまざまな環境試料について革新的分析データが得られる.マイクロビームを用いたXRFイメージングとXAFSにより,Cd蓄積植物におけるCdの細胞レベルの分布とその化学状態が明らかになった.in situ XAFSと時分割DXAFSによりダイオキシンの生成プロセスが解明され,大気中の硫酸により黄砂の石灰が石膏化する過程がXAFSによりわかった.また,環境試料中の極微量ウランも波長分散XAFSにより状態分析が可能であった.さらに放射光複合X線分析により,ヒ素含有堆積性鉄鉱石におけるヒ素の蓄積機構が解明された.最後に,次世代のX線検出器,TES型マイクロカロリーメーターを使ったSEM-EDS分析が大気粉塵の1粒子分析に有効であることが紹介された.