2010 年 79 巻 2 号 p. 150-155
スペースシャトルなどを利用した微小重力場実験では重力による対流などの発生を防ぎ,質の高い材料を実現する手段として考えられている.一方,10〜100万G(1G=9.8m/s2)レベルの強い重力下ではわずかな原子質量の違いが元素の濃度,原子の配列,結晶性に大きな影響を及ぼし,新規物質の合成,新規物性の発現を目指すことができる.筆者らは,最大100万Gを超える重力場を高温で発生できる超遠心機を製作し,固体中で構成原子の沈降とそれによる組成の傾斜構造を世界で初めて実現した.組成の変化に加えて,結晶状態,構造の変化も起きることを見いだし,同位体原子の沈降も観察している.その後,新しい物質プロセスへの応用を目視し,不定比化合物の組成・構造制御や半導体の不純物制御などの研究を開始した.本文では,前の解説(「応用物理」69,671(2000))に引き続いて,最近の研究成果と今後の展望について述べる.