2012 年 81 巻 8 号 p. 676-680
垂直磁気記録の発想とその研究開発の過程について述べ,さらに,この研究の体験から得られた科学技術研究についての考えを示した.垂直磁気記録は水平記録の極限を追求する中から生まれた.新しい研究の推進には,垂直と面内記録の相補性という指導原理が大きく貢献した.革新的技術の実用化に必然の「死の谷」を経験したが,原理に対する確信と強い産学連携により実用化に至った.垂直磁気記録は,科学に始まり技術にまで展開できたわが国では稀【まれ】な成功例といえる.また,時代が追いついた研究例でもある.科学技術の研究は,テーマの独創性だけでなく,技術として成熟するまで責任をもって推進する必要がある.技術は新たな発想の基盤となり,科学の父でもある.