2013 年 82 巻 3 号 p. 239-242
2011年3月11日の東日本大震災の惨状を目の当たりにし,多くの人が地震予知の重要性を改めて強く感じたと思う.しかし,阪神・淡路大震災(以降,神戸地震と略す)後,文部省(当時)の測地学審議会が「地震予知は将来にわたっても不可能」とする報告を発表し,地震学者,メディアを中心に地震予知不可能論が広く蔓延(まんえん)することとなった.今回の東日本大震災後にも再度その風潮が広がっている.従来の地震予知では,地殻変動を計測する力学手法が用いられてきたが,神戸地震後全く異なる電磁気手法が新たに提案され,ここ20年にてすさまじい発展が遂げられている.すなわち,多くの非地震(ほとんど電磁気)現象の前兆(予兆)が発見され,地震予知の可能性を強く示唆している.特に,電離層擾乱(じょうらん)は永年にわたる観測データから,地震との統計的因果関係が確立するに至っている.本稿では,これらの電磁気現象のいろいろを紹介し,地震予知の将来を展望する.