2014 年 83 巻 7 号 p. 543-546
スピントロニクス・デバイスの実用化に向けて磁気トンネル接合のスピントルク磁化反転電流と熱耐性を定量的に評価することが求められている.この要望に応えるには磁化反転を記述する理論の確立が必須である.スピントルク磁化反転は非保存力が働く系での反転という基礎的に難しい問題であるが,最近,この困難を乗り越えて実験と比較できる理論が提案され始めた.また,従来の反転電流や熱耐性の評価値は妥当でない可能性も示された.これらの成果により安定性が保障されたスピントロニクス・デバイスを安心して社会に送り届けることが可能になると期待される.本稿ではこの最新の理論研究の概要を紹介する.