応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
83 巻, 7 号
『応用物理』 第83巻 第7号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Science As Art
今月のトピックス
今月号の概要
解説
  • 新しいフォトニクス材料を磁性で創る研究
    宗片 比呂夫
    2014 年 83 巻 7 号 p. 536-542
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光は,高速性,選択性,非接触性,非線形性,量子性ゆえに,新規物質と組み合わせることで,新しい機能や技術パラダイムを生みだす潜在力を秘めている.その視点の下,本稿は,超短光パルスと磁性材料という組み合わせで展開されている「光とスピン(磁化)の相互作用」に関する研究の最前線を概観する.加えて,情報処理・通信の視点で捉えたフォトニクス材料としての新規応用の可能性に関する私見を述べる.

  • 下田 達也
    2014 年 83 巻 7 号 p. 553-559
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    最初に,プリンティング法を含めた溶液法プロセスにおいて,電子デバイスを作製するうえで直面する固有の課題を工程順に取り上げ,それがどのような理由で生ずるのか,一般的にどのように対処すればよいのかを述べる.次に,具体例として無機系材料である液体シリコンと金属酸化物を用いた溶液プロセスを取り上げ,課題を解決したいくつかの例を述べる.プリンティング法の課題に対しては,従来法に比べてはるかに微細化が可能な新しいプリンティング法であるナノレオロジープリンティングを紹介する.

  • テラヘルツ波の実用光源への期待
    浅田 雅洋, 鈴木 左文
    2014 年 83 巻 7 号 p. 565-570
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    テラヘルツ(THz)帯はイメージングや超高速無線通信などさまざまな応用の可能性があり,光源はそれらの応用のキーデバイスである.共鳴トンネルダイオード(RTD)はコンパクトな半導体THz光源の1つとして期待され,電子の遅延時間を短縮する構造により現在までに1.42THzの室温発振が得られており,アンテナ構造の考案やアレイによる高出力化も行われている.また最近では,イメージングやTHz無線通信への応用の基礎実験も始まっている.本稿では,RTDの高周波化・高出力化を目指す研究や,種々の応用に向けた諸特性の研究の進展を紹介する.

最近の展望
  • 谷口 知大
    2014 年 83 巻 7 号 p. 543-546
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    スピントロニクス・デバイスの実用化に向けて磁気トンネル接合のスピントルク磁化反転電流と熱耐性を定量的に評価することが求められている.この要望に応えるには磁化反転を記述する理論の確立が必須である.スピントルク磁化反転は非保存力が働く系での反転という基礎的に難しい問題であるが,最近,この困難を乗り越えて実験と比較できる理論が提案され始めた.また,従来の反転電流や熱耐性の評価値は妥当でない可能性も示された.これらの成果により安定性が保障されたスピントロニクス・デバイスを安心して社会に送り届けることが可能になると期待される.本稿ではこの最新の理論研究の概要を紹介する.

  • 光技術とエレクトロニクス技術からのアプローチ
    永妻 忠夫
    2014 年 83 巻 7 号 p. 571-575
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    テラヘルツ波を利用した分光・イメージングの発展は,フェムト秒パルスレーザーや非線形光学結晶をはじめとする光技術が支えているが,通信応用においても,同様に光技術を用いたキャリヤ信号の発生技術が進展をけん引してきた.また,近年の半導体電子デバイス技術の長足の進歩により,テラヘルツ無線用LSIが開発され始めている.本稿では,両アプローチによるテラヘルツ無線通信技術の最近の進展,技術比較,および将来展望について解説する.

研究紹介
  • スピン軌道相互作用を利用した磁化制御技術の新展開
    林 将光
    2014 年 83 巻 7 号 p. 547-552
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    本稿では,最近次々と新しい現象が観測されている極薄の強磁性へテロ構造におけるスピン軌道相互作用に由来した現象について紹介する.強磁性体の磁化方向を電流や電界で制御する技術はスピントロニクスの根幹をなす技術であり,これまでは強磁性体内で生じるスピン分極電流とスピン移行トルクを利用して磁化の制御が行われてきた.最近,スピン軌道相互作用が大きい物質や膜構成を用いることで,これまでとは異なる構造,原理で磁化を制御できることが明らかになっており,この技術を利用して,新たなスピントロニクス素子や低電力で動作するデバイスの開発が期待されている.本稿では強磁性へテロ構造を用いて作製した細線における電流駆動磁壁移動現象の新たな展開について記述する.スピンホール効果とDzyaloshinskii-Moriya(DM)型の交換相互作用という,スピン軌道相互作用に由来する2つの効果を利用することで,ヘテロ構造を形成する膜構成によって,電流で駆動した磁壁の移動方向や速度を変えることができる原理について紹介する.

  • 高橋 儀宏, 山崎 芳樹, 藤原 巧
    2014 年 83 巻 7 号 p. 560-564
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    結晶化ガラスはガラスマトリックスに結晶が析出した優れた機能性材料であり,析出結晶を選択することでさまざまな応用展開が可能である.本研究では,過剰なガラス成分を可視光波長よりも小さなナノ粒子として単結晶ドメインに凍結することで,緻密な結晶組織と高い光透明性を有する完全表面結晶化ガラスの創製に成功した.前駆体ガラスを熱処理するのみで,光学単結晶に匹敵する光機能を有する多結晶セラミック材料を得ることができ,特に透明化は,従来の結晶化ガラス法とは正反対のアプローチである.

  • 角屋 豊
    2014 年 83 巻 7 号 p. 576-579
    発行日: 2014/07/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    テラヘルツ時間領域分光におけるパルス光源として,小型で安定性に優れる1.5µm帯ファイバレーザーへの移行が進んでいる.この波長帯に適合したテラヘルツ波発生・検出用光伝導アンテナ材料の開発が必要であるが,従来広く用いられてきた低温成長GaAsでは励起効率が低い.InGaAsを用いたアンテナも市販されているが,雑音が高いなど,その性能には改善が望まれる.一方,低温成長GaAsアンテナは極めて低雑音であるので,非線形吸収を活用できれば,1.5µm帯励起においても有用なアンテナになりうる.本稿では,低温成長GaAs光伝導アンテナの1.5µm帯励起に関する筆者らの最近の研究を紹介する.

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