2016 年 85 巻 7 号 p. 553-559
(国研)宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所電気推進研究室が,米欧露とは技術的に一線を画して研究開発したマイクロ波放電式イオンエンジンは,「はやぶさ」小惑星探査機の主推進として採用され,地球〜小惑星間宇宙往復航行を世界に先駆けて実現した.高効率・省電力でプラズマを生成しながら1台当たり2年間にも及ぶ耐久性を宇宙で実証した.宇宙活動と同時並行で行われた地上におけるさらなる研究開発は,光ファイバを用いた新たな探針法によりイオン源内部現象を解明し,性能向上をもたらした.改良されたイオンエンジンは,「はやぶさ2」小惑星探査機において,新たな小惑星に向けてその能力を今まさに発揮中である.本稿では,従前の電極を用いる直流放電式システムと比較しながら,電子サイクロトロン共鳴型イオン源の高い性能と耐久性を解説する.