2017 年 86 巻 11 号 p. 950-955
2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響により炉心溶融が起きた福島第一原子力発電所は,現在,廃炉へ向けたさまざまな取り組みが進められている.その中でも宇宙線に含まれるミューオンがもつ極めて高い物質に対する透過力を利用することで大型構造物の内部を非破壊で可視化する技術(宇宙線ミューオンラジオグラフィ)により,原子炉内部の様子の一端が明らかになった.本稿では,筆者らが進めてきた原子核乾板による宇宙線ミューオンラジオグラフィの観測から得られた知見と現状を紹介し,原子炉底部の可視化の実証試験を進めている浜岡原子力発電所における最近の研究についても述べる.