応用物理
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最近の展望
結晶シリコン太陽電池の新規キャリヤ選択性パッシベーティングコンタクトの開発
松井 卓矢
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2021 年 90 巻 6 号 p. 346-350

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抄録

高効率な結晶シリコン太陽電池を製造する技術として,シリコンの表面欠陥を不活性化するパッシベーション機能と,電子または正孔の一方を選択的に取り出す機能を併せもつ「キャリヤ選択性パッシベーティングコンタクト(Carrier Selective Passivating Contact)」が注目されている.特に,既存技術で用いられているアモルファスシリコンなどの材料を,より低コストで光学的に透明な材料に置き換えることを目指した研究が繰り広げられている.本研究では,結晶シリコンに原子層堆積法で製膜した酸化チタン(厚さ:約5nm)が良好な表面パッシベーションを実現しつつ,キャリヤ選択性を制御できることを見いだし,太陽電池応用を目指した研究を行ってきた.従来,酸化チタンはさまざまな半導体や太陽電池材料に対して電子選択性コンタクト(負極)として働くことが知られてきた材料であるが,製膜条件やポスト処理によりシリコンから正孔を選択的かつ効率的に取り出すことに成功し,20%を超える変換効率を実証した.今回開発した技術により,結晶シリコン太陽電池に用いられてきた従来の正極材料に優(まさ)る性能を低コストな材料・プロセスで得られる可能性があり,高効率で低コストな太陽電池の実現につながることが期待される.

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© 2021 公益社団法人応用物理学会
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