2022 年 91 巻 6 号 p. 356-360
走査型プローブ顕微鏡は,原子分解能で物質の構造および電子状態の計測を可能とするだけでなく,探針を用いて原子や分子のマニピュレーションや表面構造の加工にも用いることはできる.また,一酸化炭素分子で終端したプローブ顕微鏡の探針を用いることで,表面に吸着させた単分子の構造を直接的に解析できる計測技術も開発された.この2つの先端計測技術を融合させることで,有機化学で合成した小分子を前駆体としたナノ物質のボトムアップ組み立てが可能となってきた.いわゆる,プローブ顕微鏡を用いた単分子レベルでの化学である“Local Probe Chemistry”の研究である.本稿では,急速に発展してきた本研究分野の最新の成果を中心に紹介する.