抄録
水素ガス摂取が細胞毒性の強い活性酸素種を選択的に消去し,酸化ストレスに対して細胞防御機能を有する抗酸化剤になることが報告されている.本研究は身体への負担が大きいと考えられる夏合宿期間において大学男子駅伝選手を対象に高濃度水素酸素ガス(HHOガス)の吸入が酸化ストレス指標や筋損傷・肝機能指標に与える影響を検討した.大学男子駅伝選手17名を対象に夏合宿期間中における8日間を調査期間とし,トレーニング・主観的コンディション指標を毎日,酸化ストレス・筋損傷・肝機能指標を1日目,7日目,8日目の16~18時に測定した.HHOガス(水素65%,窒素0.9%,酸素33%,流量250cc/分)の吸入時間およびタイミングは選手の自主性に任せ,各選手のHHOガス吸入総時間の中央値を境にHigh volume群(H群:6名)とLow volume群(L群:11名)の2群に分けた.酸化ストレス度(d-ROMs)はL群でのみ1日目と比較し8日目で有意な低下を認めた(p<0.05).抗酸化力(BAP)はH群でのみ1日目と比較し7日目で有意な低下を認めた(p<0.01).クレアチンキナーゼは両群で1日目と比較し7日目で有意な低下を認め(p<0.01),L群でのみ8日目に上昇する変化が示された.他の指標における変化は認められなかった.8日目午前に25km走が行われたことから,その前後である7~8日目の各指標の変化率とHHOガス吸入総時間との関係をみたところ,d-ROMsとの間に負の,BAPおよびBAP/d-ROMsとの間に正の相関関係を認めた(r=-0.45,p<0.1:r=0.47,<0.1:r=0.61,p<0.01).調査期間中のHHOガス吸入による効果は認められなかったが,25km走後における酸化ストレスへの影響は事前の吸入時間に応じて軽減される可能性が示された.