主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
本研究は,特定の飼い主をもたず野外で自由に暮らしているノラネコFelis catusを対象に,ネコの性格特性の時間的および通状況的な一貫性について調べた。調査地のノラネコは食料をヒトに依存していることから,ヒトとの個体関係の構築も重要である。そこで本研究では,ネコのヒトに対する「友好性」の性格特性を実験的に評価した。具体的には,実験者が食物刺激を提示したときのネコの接近行動(テスト1)と,実験者がネコに接近したときのネコの回避行動(テスト2)の2種類の行動テストを行った。まず,同じ個体に対して約1年の間隔をあけてテスト1とテスト2を行ったところ,それぞれのテストの評価値の相関係数は高く,再検査信頼性は十分であることが示された。次に,テスト1とテスト2の評価値の関連を調べたところ,2つのテスト間に有意な相関関係はみられなかった。そのため,少なくとも本研究の2種類のネコの「友好性」指標については通状況的一貫性があるとはいえなかった。以上の結果は,ヒトとニッチを共有する家畜動物が対人場面でみせる性格特性は,時間的には安定しているものの,周囲の状況や刺激の特性に応じて変化することを示唆している。