主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
刑事事件において虚偽自白の発生を高めるリスク要因として取調べ迎合性がある。近年,迎合性の高さが不注意傾向やADHDの高さと関連することが指摘されているが,その影響過程は明らかでない。ADHDや不注意傾向の高い者では,一般に,実行機能の低下が認められる。実行機能の低さが社会的自己制御に影響し,これが最終的に迎合性を高めるという一連のメカニズムの存在が考えられる。そこで,本研究では不注意傾向と迎合性の関係を,社会的自己制御および不安傾向が媒介する可能性を検討した。20~40代の社会人618名にウェブ調査を実施した。分析の結果,不注意傾向から迎合性への直接効果のみを想定したモデルより,不注意傾向が社会的自己制御および特性不安を媒介し,迎合性に影響するモデルの適合度が良好であった。間接効果を検討したところ,不注意傾向は社会的自己制御の自己主張・自己抑制,特性不安を媒介して迎合性を有意に高めることが示された。本研究の結果から,不注意傾向は社会的自己制御と不安傾向に影響を及ぼし,これらが最終的に迎合性を高めるという一連のメカニズムの存在が示唆された。