日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PI-008
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9. 認知
Spatial Orientation Testの得点化方法の改善―フォン・ミーゼス分布による角度データのモデリング―
*武藤 拓之
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抄録

自分とは異なる視点に立って物の位置関係を把握する認知過程は空間的視点取得と呼ばれる。この能力を測定するテストの1つであるSpatial Orientation Test (SOT) は,日常物体の配列に対し,指定された視点に立ったときの標的物体の方向を,円の中に矢印を引いて回答するテストである。オリジナルのSOTでは,回答方向と正解方向の最小角距離の項目間平均がSOT得点として用いられるが,この得点化方法は理論的根拠に乏しく,回答のバイアスとばらつきを分離できないという問題もある。そこで本研究は,方向統計学で用いられるフォン・ミーゼス分布をデータに当てはめたときの位置母数μと尺度母数νを新たな指標として用いることを提案した。正解方向を0度と定義したとき,μは回答のバイアス(正解方向からの平均的なズレ),νは回答のばらつき(円周標準偏差)として解釈できる。Muto (submitted, N=46) のSOTデータを用いて参加者ごとにμνを最尤推定した結果,別のテスト(Road Map Test)で測定された空間的視点取得能力の得点は,最小角距離の項目間平均(r=-.29)よりもνr=-.39) と有意に強く相関することが示され,提案手法の有用性が示唆された。

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© 2020 公益社団法人 日本心理学会
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