日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PI-050
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9. 認知
電柱と電線は景観を損ねるか―京都東山と広島尾道の景観を題材として―
*山田 歩加藤 彩香藤木 庸介
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抄録

電線・電柱は景観を損ねるものとしてしばしば批判にさらされてきた。しかし,電線・電柱が景観印象を損ねることを示した実証研究の多くは,電線・電柱の存在に意識が向きやすい条件下で参加者に評価を求めたり,電線・電柱が置かれる街並み全体の特質を考慮していなかったりなど,調査結果の代表性を毀損する問題を抱えている。本研究では,1)電線・電柱への意識の向きやすさ,2)街並みのタイプ,の2要因を操作し,参加者に景観の印象をたずねた。実験刺激として,電線・電柱を含む景観画像(有電柱景観)と,それらを画像処理により除去した画像(無電柱景観)を用意した。景観には古い町家風景が残る京都東山エリアと,雑多な家が複雑に並ぶ広島尾道エリアを選んだ。実験の結果,有電柱景観と無電柱景観を同時に比較するときに,有電柱景観の評価が低下した。さらに,この傾向は京都東山景観に限定され,尾道景観では確認されなかった。実験結果は,電線・電柱の存在が意識されにくいとき,それらは景観の印象に必ずしも影響しないこと,また,電線・電柱が街並み全体を構成する景観特性と整合的関係にある空間では,景観の印象を損ねるとは限らないことを示唆する。

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