主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
目 的
顔などの記憶を言葉で整理すると,言語的機能の利用によって心的状態が変化し,後の再認が妨げられる事がある。この現象は言語陰蔽効果と呼ばれている。我々は自己の心的状態を分析するときにも言語を用いるが,自己認知に言語的機能がどのように影響するかはあまり検討されていない。先行研究より,自己顔は他者顔に比べ恥感情を喚起しやすいことが明らかになっている(Morita, et al., 2008)。そこで本研究では,自己顔による恥感情喚起が言語化によってどのように変化するかを検討した。
方 法
参加者(146名)に他人の顔画像と鏡映像を見せてどの程度恥ずかしさを感じるか評定させた後,3分間自己顔の特徴を言語化させ(統制条件はリスト課題),参加者自身の顔写真と鏡を見てもらい恥感情を評定させた。
結果と考察
統制条件では自己受容度が低いほど自己顔に対する恥感情が喚起されやすかった。一方,言語化条件では自己受容度の影響が消失することが明らかになった。さらに,言語化条件の傾向は私的自意識が高い参加者においてより顕著に現れた。以上の結果は,自己顔の言語化は自己認知を変容させ,恥の感じやすさに影響する可能性を示している。