主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
負傷選手が陰性情動の表出を抑制することは,その情動の滞留による負の影響が懸念されるが,再解釈を同期させた自己統制下では受容の維持や促進を可能にさせる(Tatsumi & Takenouchi, 2019)。そこで本研究では,負傷ダメージや表出抑制との関連が仮定される個人要因を検討することを目的とした。元負傷選手180名に質問紙調査を行い,個人要因に係るスポーツ倫理への関与,競技者アイデンティティ,感情伝達困難さの3尺度と情動調整に係る表出,表出抑制及び再解釈の3尺度との相関を検討した。結果,個人要因に係る3尺度と表出抑制との間に有意な相関を認めたが(順にr=.39, .29, .29でいずれもp=.00),表出はいずれの尺度とも相関を認めなかった(r=-.07-.03, p=.38-.78)。なお,スポーツ倫理への関与及び競技者アイデンティティの2尺度と再解釈との間には有意な相関を認めたが(順にr=.16, p=.03; r=.22, p=.00),感情伝達困難さと再解釈との相関は示されなかった(r=-.07, p=.33)。以上からは,スポーツ倫理への関与や競技者アイデンティティは表出抑制と再解釈ともに正の関連があることから,受容の促進要因となる可能性が示唆された。