主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
ヒトは社会的動物であるがゆえに,発達の早期からさまざまな社会的認知能力を備えている。本講演では,講演者が行ってきた乳児期早期の社会的認知発達研究を紹介する。具体的には,乳児期早期の①知覚と行為の発達的対応に基づく他者の(行為)理解とそのメカニズム,②原初的な同情心や正義感といった道徳・向社会性,③他者からの社会的学習とそのメカニズムといった3つのテーマに関連する研究を紹介する。他者の行為理解の研究では,他者の行為理解の神経基盤とされるミラーシステムに着目し,その個体発生のメカニズムを論じる(Kanakogi & Itakura, 2010)とともに,乳児期早期の他者の行為理解においてミラーシステムが機能していることを実証的した研究を紹介する(Kanakogi & Itakura, 2011)。道徳・向社会性の研究では,生後1年目の乳児を対象に,幾何学図形のエージェントが攻撃相互作用を行っている様子を見せ,犠牲者に対する選好(動物行動学の理論から他者への原初的同情心と解釈される)がみられることを見出した研究(Kanakogi, Okumura, Inoue, Kitazaki, & Itakura, 2013)や,この研究を拡張し,生後半年の乳児において,攻撃行動(いじめ)を止める第三者,つまり正義の味方を選好すること示した研究も紹介する(Kanakogi, Inoue, Matsuda, Butler, Hiraki, & Myowa-Yamakoshi, 2017)。他者からの社会的学習に関する研究では,ヒューマノイドロボットとの比較により,乳児期初期にヒトからの特異的な学習過程があることを明らかにした研究(Okumura, Kanakogi, Kanda, Ishiguro, & Itakura, 2013)や乳児の学習を促す信号の役割や機能を明らかにした研究(Okumura, Kanakogi, Kobayashi, & Itakura, 2020),横ふりのジェスチャーが乳児の学習を促進させることを発見した研究(Hirai & Kanakogi, 2019)などを紹介する。当日は,これらの知見をもとに,乳児期早期における社会的認知能力についてフロアーの方々と多角的に議論したい。