主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
日本の刑事司法制度はここ30年で,被害者の権利の拡充や捜査技術の向上などのため,大きな改革がいくつかされてきた。特に2016年の改正では,一連の冤罪や捜査不正の発覚もあり,取調べを中心に取調べ可視化や司法取引制度などの新たな制度が導入された。しかし国外の社会心理学的知見によれば,その問題点が指摘されていたにも関わらず,それらの制度は導入され,実施されている。たしかに国外の研究ではそれぞれの国家の刑事司法制度を前提としており,日本の刑事司法制度とは異なるものである。よって刑事司法制度に関しての問題点について実証的な検討を行い,制度の妥当性を検証する必要がある。そこで本報告では,裁判員制度に関して様々なバイアスの影響が司法判断に及ぼす可能性について検討を行った。また取調べ可視化制度,司法取引制度という冤罪の防止や捜査の高度化のために導入された制度について,市民の判断などを介して冤罪の助長する可能性を検討した。これらの結果を踏まえて,それらの制度における妥当性と刑事司法における心理学的研究のあり方について提言する。