主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
質問紙では,回答者の心理的負担を考慮し,質問文のワーディングは明快で簡潔な表現とし,否定表現を避ける,特に二重否定は避けることが望ましいとされている(平井,2003;Krosnick and Presser, 2010)。しかし,実際には逆転項目などで質問文に否定が含まれることや,回答の選択肢に「あてはまらない」などの否定が含まれることは多い。また,質問文と選択肢双方に否定を含む組み合わせの場合は,結果的に二重否定となる。金城ら(2019)は,質問紙の質問文や回答選択肢に否定が含まれる場合に高齢者群と若者群両群での反応時間の遅れを確認し,質問内容によっては判断に歪みが出る可能性を報告した。一方で,社会的望ましさによる回答の偏りを抑制するために質問文に否定を利用する効用も考えられる。そこで,本研究は心理学領域の質問紙における否定の利用実態を調べるために文献調査を行った。方法は,幅広い心理学領域が網羅されている『心理測定尺度集I~Ⅵ』(サイエンス社)に掲載されている全ての尺度について,質問文の否定利用の割合,および,回答選択肢の分類から否定表現の種類と利用の割合を調べた。